俺様社長に捕らわれて
「私の口からは何とも…」
「どういうことだ?」
「………」
「田中?」
「お嬢様が付き合っている方は、間違いなく長谷川社長です」
「やはり…」
「しかし、向こう方がそのことについて誤解のないよう、しっかりと説明をしたいとのことです」
「誤解?買収を仕掛けてきた男だぞ?そんな男が美優と真面目に付き合っているとでも?……馬鹿馬鹿しい」
「お言葉を返すようですが、もし長谷川社長が本気だとしたら?あの買収もお嬢様を手に入れたいがための計画だったとしたら?社長はそれでも反対をするおつもりですか?」
田中の歯向かうような態度に驚いていた。
いつもどんな時でも、社長である自分に忠誠な態度を取っていた田中。
逆らうような態度を取ったのは、これが初めてではないだろうか。
「それに、お嬢様のあの表情を見てもまだ反対だと言えるんですか?」
「……別に反対しているわけではない。ただ、美優に辛い思いをしてほしくない。ただそれだけだ」
「それは私も同じです。ですが、少しはお嬢様が選んだ方を信じてあげても良いんではないでしょうか」
「………」
「それに、今日長谷川社長に会えばはっきりするはずです。長谷川社長が一体どういうつもりなのか、どういう魂胆なのか。反対するのはそれからでも良いんではないでしょうか」
「はぁ~…お前も美香と同じようなことを言うんだな」
「奥様ですか?」
「あぁ。美優が選んだ人を信じられないのかとか、政略結婚は許さないだとか散々言われたよ」
徹也は金曜日の夜の出来事を思い出し、苦笑いを浮かべていた。