俺様社長に捕らわれて
とある金曜日の夜。
洋輔は、バーに足を運んだ。
「よう、待ったか?」
「いや、俺もさっき来たところですよ」
洋輔は既にカウンターに座っていた一人の男に声を掛けた。
「悪かったな。急に呼び出したりして。仕事は大丈夫だったか?」
「洋輔さんからのお誘いだったので、急いで仕事を終わらせてきましたよ。それに、今は副社長という立場なので、仕事もそんなにキツくないですしね」
「よく言う。もう直ぐ、父親の後を継いで社長になるんだろう?」
「良くご存知ですね」
「西條コーポレーションは、この噂で持ち切りだからな」
「どこからそんな噂が出るんだか…。弟の奏大がもうすぐ大学を卒業するので、あと2、3年ってところですかね。まだ先の話ですよ。今は専ら勉強中です」
そう。
洋輔が待ち合わせをしていたのは、西條コーポレーションの副社長、西條弘大であった。
実はこの2人、たまたまこのバーで知り合って意気投合し、今では飲み友達となっていた。