俺様社長に捕らわれて
「社長…車を回して来ますので…」
「いや、良い」
「と言いますと?」
「歩いて帰る」
「は?」
「ちょっと考え事をしたいんだ。お前は車で先に帰っててくれ」
「しかし…」
「圭人…頼む…」
人目がある場所では決して圭人のことを名前で呼ぶことのない洋輔が、弱々しい声で頼んだのである。
相当、苦戦している今回の案件に、洋輔も参っているのだと感じた圭人は、溜息をついた。
「仕方ありませんね。2時間です。それ以上は認めませんからね」
「サンキュー」
それだけを言うと、洋輔は歩いて何処かへと行ってしまった。
そんな洋輔の後ろ姿に、何とかしてやりたいと思う圭人なのであった。