俺様社長に捕らわれて




「成長していくに連れ、私が一人娘であることや、いずれは会社を継ぎ、お婿さんとなる旦那様を見つけなければならないという思いが自分の中に芽生え始め、あの時思い描いた感情を自分でも気付かないうちにいつの間にか、心の奥底へとしまいこんでしまったんです」

「確かに君は藤堂社長の一人娘。会社のことを考えたら跡取り娘という立場からは自分の好きなような道には進めないな…」

「父に言ったらもしかしたら私の好きな道へ…と導いてくれたのかもしれません。だけど、私は両親のことを考え、自分でも気付かないうちに、自分の思いに蓋をして、人生の分岐点には必ず両親の思いを汲んで来たのだと思います」

「なるほど……」

「あ…こんな話、つまらなかったですよね…。すみません、こんな話を長く聞かせてしまって」

「いや、構わない。それに、俺が君に話して欲しいと頼んだんだ。気にすることない」

「そうですか?ありがとうございます」








洋輔にそう言われた美優はハニカミながらも、そう答えることでいっぱいいっぱいだった。


そんな美優の様子に、洋輔は一瞬であったが、クスリと笑みを浮かべていた。
そして、コーヒーを一口飲むと、洋輔が口を開いた。






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