俺様社長に捕らわれて
「そういえば、君はあそこで何をしていたんだ?」
「外回り…と言っても銀行や郵便局に行っていただけなんですけど、その帰りだったんです」
「そうか…。時間は大丈夫なのか?」
「はい。田中さんが、休憩がてら行って来て欲しいということだったので、15時までに戻れば問題ないです」
「あと1時間か…」
「長谷川社長は大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ……2時間…」
「2時間?」
洋輔が言った言葉の意味を理解出来ず、美優はそのまま聞き返した。
「そう、俺のリフレッシュ時間。2時間以上はダメだと圭人に念を押されてる」
「圭人さんってあの秘書の方ですか?」
「あぁ。奴とは学生時代からの親友で、俺の良き理解者なんだ。今回も苦戦している案件で、俺が参ってると感じて、ギリギリの2時間っていう時間を作ってくれたんだ」
「圭人さんは秘書としても優秀な方なんでしょうけど、長谷川社長…」
「洋輔」
「へっ?」
「洋輔で良い。仕事以外の場所で社長だなんて言われると、常に気を張っていなきゃいけなくなるから、名前で呼んでくれ」
「けど…」
「俺が良いと言っているんだ。構わない。それに、俺も君のことを美優と呼ぶから」
「…わかりました」
美優はあまり納得をしていない様子ではあったが、洋輔の強引さに負けてしまい、名前で呼ぶことを承諾してしまったのであった。