♠俺様王子と貧乏メイド♧
金持ちの境界線
「おはよ!咲良ちゃん!」
「あ、おはよ。茜ちゃん」
私は昨日の事はすべて夢だった事に
していつものように学校に登校してきた。
私がお金持ちのメイドなんて
そんなの絶対ありえない。
ご飯を食べる時もお風呂に入ってる時も
布団に入った時もずっとそう思った。
「ばか咲良おはよー!どした?
いつもに増してバカみたいな顔
してるけど」
そう言って私のツインテールを
引っ張ったのは幼なじみの井上 勇人。
小さい頃から私のことをバカバカと
からかってくる嫌な奴。
「うるさい!ばか勇人!!」
でも実は私の様子がおかしい時に
いつも話しかけてくれる優しい人。
「お前さ、なんかあった?」
「べつにー。なんで?」
なんで分かるんだろう。
「ん、いやなんとなく。
なんかあったら俺に言えよな。
昔みたいにやっつけてやるからさ」
そう言ってさっきまで持ってた私の
ツインテールをそっと離した。
「もうあの犬は怖くないもんね」
私はそのツインテールを右手で撫でる。
あの犬とは昔、私の通学路の途中にいた
凶暴な犬の事。
勇人、泣きながらも戦ってくれたんだっけ
懐かしいな。