その光を、追いかけて。




初めて会った時は、なんてチャラい人なんだって思った。

どんな時でも柚季に手を出しそうだから、その印象は今も変わらない。



生意気な俺を嫌がることもない渉さんと違って、変な絡み方をしてくるし。

何度やめてくれと言っても俺のことを『てるてる』とか馬鹿みたいな呼び方をやめない。



なんて面倒な先輩だ! って。






だけど、走りを見た瞬間に、目を奪われた。



いつだって、やる気はない。

筋トレも、しんどい練習も嫌い。



なのに、……真剣に走っている時のその姿だけは、誰よりも綺麗。






柚季を狙う陽介さんは、嫌い。

いつだって俺を不安にさせて、迷惑。

もっと練習、真面目にして欲しい。

いちいち文句ばっかで腹が立つ。



そんなとりとめのない感情の原因。

陽介さんなんて本当、大嫌いだ。



でも。だけど。










陽介さんを嫌いじゃないと思っている俺も、……確かにいるんだ。






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