その光を、追いかけて。




陽介さんは、本当は誰よりも素質があると思う。

こんなに不真面目なのに……。



綺麗なフォームで走れる人は、早々いない。

宝の持ち腐れってやつ。



これが才能ってやつなんだろう。






────俺にはないものだ。






陽介さんが頑張ったら、きっとすごいのに。

なんでこの人は頑張らないんだろう。






「てるてるはどんどん速くなるなー」



へらりと笑った陽介さんに思わずむっとする。



「陽介さんも、もっと速くなります」



きょとん、としてまばたきが増える。

ぱちぱちっと繰り返して、自分に指を向けた。



「おれも?
はっはー、照れるなー」

「……」

「てるてるって結構おれのこと好きだよねー」

「いや、嫌いです」



真顔で即座に言うと俺の頭をがしっと掴む。

そのままぐしゃぐしゃーと髪をかき混ぜられた。



「照れ屋さんめーっ!」



勘違いも甚だしい。






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