その光を、追いかけて。
空気に耐えられなくなった俺は、ぎゅうぎゅうと柚季を抱き寄せた。
「わっ」
「風邪、移ったらごめん」
「そ、う思うなら、離してよ。
背中……痛い、し」
確かに、辛そうな体勢。
頬と頬が触れ合う。
布団を間に挟んではいるけど、体がぴったりとくっついていて。
耳元に囁くような距離は、吐息がはっきりと聞こえるくらい。
でも……、
「もうちょっと」
息を呑む音。
耳のすぐそばでしたせいで、むずむずとこそばゆい感覚。
「……うん」
柚季は猫がこすりつけるように、肩に顔を埋めた。
「それにしても、部長と陽介さんと走れるとか楽しみだなぁ」
「え、違うよ?」
予想外の発言に、は? と言葉を返す。
風邪か、動揺か。
俺の声はかすれていた。
「今回は渉さんと輝だけ。
陽介さんは、走らないよ」
こうして、俺の光がかすみ始めた。