その光を、追いかけて。




家に連絡を入れるから、と先生に別室へ行けと言われた。



職員室から出ると、登校中の生徒の視線が突き刺さる。

騒いでいたから、きっと廊下にいた生徒の耳にも届いてしまっていたんだろう。



好奇の瞳、瞳、瞳。



まとわりつく嫌悪感。

言葉として認知できない音。



だけど、そんなことが気にならなくなる人の姿。

────柚季だ。



友だちと並んでおしゃべりしている。

俺は話したことのあまりない女に対してだけど、浮かんだ彼女の笑顔にホッとした。



あの日以来に見ることができずにいたから、様子が気になっていたんだ。



「柚季!」



ぴくりと反応して、目が合う。

確かに合った、はずなのに。



「っ……!」



身を翻し、駆け出す柚季の後ろ姿。

追いかけるように声をかける友だちの声が文字となって、儚く散っていく。






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