その光を、追いかけて。




バッと柚季が駆けて行った方に顔を向ける。

当然のことだけど、そこにはもう柚季の姿はない。



「でも、あの子につけた傷はそれだけじゃない」



その言葉に再び顔を向ける。

泣き出しそうに濡れた瞳がどれだけ柚季を大切に想っているかを物語っていた。



「────心の傷よ」

「俺、は……」



あんたの言葉なんて聞きたくない、とばっさり切られる。

俺はただ声を、言葉を、たくさんのものを失う。



「ねぇ。好きな人に傷つけられた柚季の気持ち、わかる……?」



シャツを引っ張るように、すがるように掴まれる。

顔を伏せた彼女の顔は見えなかった。



だけど、そのあと。

家に帰らされてからも、俺の中で柚季の気持ちを代弁するかのような言葉が重く響いていた。






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