その光を、追いかけて。
「あいつも色々あったのねー」
くるり。
梓ちゃんがストローを回す。
「仁葉ね、坂元くんになんにも言えなかったの」
言葉が、なにも出てこなかった。
なんて言えば、坂元くんが楽になるのか。
坂元くんが気にしなくなるのか。
考えても、考えてもわからなくて。
ただ、話が終わり、走って行った彼にまたねと囁くようにこぼしただけ。
「その場限りの安い言葉をかけるより、ずっとましよ。
そんなの、あいつはきっと何回も聞いてきたに違いないわ」
「そっか……」
こういう時、誰かのためになにかをすることのできない非力な自分をひしひしと感じる。
とっても、とっても難しいね。