その光を、追いかけて。




一瞬、瞳を伏せた梓ちゃんがまっすぐな瞳を向けてくる。



「信じることも、好きでいることも、とても難しいわ。
大切にしていきたいことって、どれも簡単じゃないの」

「うん」

「でも仁葉にはできるってこと、あたしは知ってるわ」



仁葉はそんな、すごい人じゃない。

梓ちゃんの思いかぶりだよ。



本当の仁葉はきっと梓ちゃんの思い描いてる姿とは違う。



仁葉はただ、光ちゃんとの約束を守ろうとしているだけ。

光ちゃんの言葉がなかったら、今の仁葉はいないもん。



だけど、



「坂元の問題は複雑だからこそ、きっと仁葉のその無邪気さが必要だと思うの」



梓ちゃんがそこまで言ってくれるなら、仁葉はもう1度坂元くんのことを考えたい。

それで、答えを出すの。



「梓ちゃん……ありがとう」






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