その光を、追いかけて。
*
土手で坂元くんに会ったあの日と同じくらいの時間帯。
朝の6時半の土手に、仁葉はひとり立っていた。
何度も出るあくびをかみ殺し、意識を切り替える。
太陽が徐々に仁葉の肌を焼こうとあつくなってきた。
手持ち無沙汰でしゃがみこんで、葉が揺らめくのをじっと見つめる。
……大丈夫。
仁葉の言いたいことは伝わるはず。
ちゃんと言葉にして、届くようにすればきっと、きっと……。
きゅう、と唇を噛み締める。
広がる痛みになんとか落ち着こうとしてみた。
その時、聞こえてきた一定のリズム。
タッ、タッ、と靴が地面と擦れる音。
顔を上げた先に、いつかのように走って来ている……坂元くんの姿。
「坂元くん!」
「すず、みや……」
どうして、と言いたげな表情になんか気づかなかったふり。
「────おはよう!」
そう言って、仁葉はこわばっていた頬を緩めて、笑顔を浮かべた。