その光を、追いかけて。
「こら、倒れるぞ」
正面に座る輝くんが、仁葉の飲み物が倒れないように少し遠ざけてくれる。
「うう、輝くんありがとう……」
「別にいいけど」
えいっとシャーペンを投げ出す。
「数学なんて嫌いだよーぅ」
うつ伏せた仁葉の髪がテーブルの上に広がる。
梓ちゃんがさらり、さらりとそれを梳いてくれる。
「今日はいつもより気もそぞろね。
なにかあったの?」
梓ちゃんの言葉に声を詰まらせる。
「なんでも、ないよ……?」
なにか、なんて。
あったことはあったけど……口にはできないよ。
誰にも言えない、言わない。
仁葉の秘密に触れさせることはできないから。