その光を、追いかけて。




「それからね、たくさんの人に優しくして。そうしたら、仁葉の周りには優しさで溢れるから」

「どうして?」

「優しさには優しさが返ってくるんだよ」



ふっと、吐息を吐き出すように笑った光ちゃんが、冷たく長い指先で仁葉の涙をすくう。



「僕はもう、仁葉の涙を拭ってあげられないから。だから、泣かないで」

「……うん」

「いいこ」



子ども扱いにむっとしながらも、その声の温度に胸が熱くなる。

思わず〝好き〟って気持ちがこぼれ落ちそうになる。



目をゆるりと閉じて、開いて。

繰り返すまばたき。



溜まっていた涙を振り落とすようにして、シーツへと染みていくのを見届けた。






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