その光を、追いかけて。
「仁葉、そろそろ」
「……うん」
パパとママに促されて、頷いた。
ふたりも光ちゃんママに挨拶をする。
ありがとう。
こちらこそ。
そんな定番のやりとりが仁葉の頭をすり抜けて行った。
「ねぇ、仁葉ちゃん。
私たちは、仁葉ちゃんのことが好きよ」
「っ……」
「たとえ仁葉ちゃんが光への想いを失っても、大好きよ」
そう言って光ちゃんママは、光ちゃんとおんなじ手つきで仁葉の頭を撫でた。
「いつかまた、きっと会いに来てね」
その叶えられるとは思えない言葉には、返事をすることはできなかった。
ぐっとあごを引いて、うつむく。
「────光(ひかり)になってくれて、ありがとう」
それが、仁葉が光ちゃんママと交わした最後の言葉だった。