その光を、追いかけて。
前回と違って今日は集中しているらしく、仁葉の手は止まらない。
まぁ、数学じゃなくて家庭科のレポートをしているということも影響しているんだろうけど。
教科書や印刷した資料をぺらりとめくりながら、書きこむ姿は真剣そのもの。
ふたつに結んだ髪が机に乗っていて、邪魔そうに見えるのに気にも留めていない。
「なぁに?」
俺の視線に気づいた仁葉が首を傾げる。
「……髪。伸びたなって」
そっと髪に手を伸ばした。
俺が仁葉と出会った頃は肩に届かないくらいだったのに、今ではすっかり越している。
耳より上で結ばれているのにこの長さって、下ろしたら一体どれくらいあるんだろう。