その光を、追いかけて。
バッと仁葉が俺の腕の中から逃げ出した。
掌が強く握り締められている。
表情は珍しく笑顔じゃなくて、呆然としている。
恥ずかしげに目をそらして、そしてぎゅうとまぶたが閉じられた。
どくん、と心臓が大きな音を立てる。
「ひと、は……?」
君に手を伸ばして、
「っ、」
その手を振り払われた。
さっきまでとは違う様子。
もう1度視線が重ねられて、瞳の中の悲しみに声を失う。
「────仁葉は、大嫌い」
鳴り響くチャイムの音と同時に、仁葉がその場から駆け出した。
もう、手は伸ばせなかった。