その光を、追いかけて。




そして、すぐに光ちゃんのことを思い出した。



仁葉は光ちゃんだけが、好きなのに。

まるで、裏切ったみたいで。



────胸が苦しくなった。



どきどきなんてしないで。

そわそわなんてしないで。



だめだよ、仁葉。

……だめ。



「光ちゃん、……光ちゃん」



魔法の言葉を口にする。



瞳を閉じて、今度開けたら……。

ほら、もう元どおり。






誰もいない教室で窓の方に目をやると、綺麗な青空。

夏の間、ずっと浮かんでいた入道雲が消えて、空の色がよくわかる。



もっと、ちゃんと見たいな……。



空以外が見えない場所。

そこで見たら、今よりずっと綺麗に見えるはず。



ちょっとだけ悩んで、席を立った。

放課後の今ならきっと、仁葉以外には誰もいないよね。



目指すは────屋上。






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