その光を、追いかけて。
うっすらと開かれた瞳。
焦点は合わなくて、ゆらゆら。
しばらく宙を漂う。
「────」
聞き取れない、誰かの名前。
確かに坂元くんは、囁いていた。
でも、きっとそれは仁葉が聞いていい名前じゃないね。
「坂元くん、大丈夫?」
「え、と、っあ……」
ようやくちゃんと目が合う。
小さくにこりと笑った。
「坂元くんね、さっき倒れたっていうか、半分意識失ったちゃったんだよ。
覚えてる?」
「あー、……うん。
なんとなく、思い出してきた」
ふぅ、と深い呼吸。
仁葉の手を離して、頬を伝う汗を乱暴に拭う。
「よかった。
今ね、先生がおうちに電話してるよ」
「それで、お前は?」
「え、仁葉?
仁葉は坂元くんが心配だったから、先生が戻ってくるのを待たせてもらってるんだー」
「なんで?」
素早い切り返しに、声を失う。
な、なんでって……。
心配だから、って仁葉、今言ったのにな。