その光を、追いかけて。
*
「ねぇ、梓ちゃん。
数Ⅱの課題してきた?」
自分の席に座っている梓ちゃんの横に立って、声をかける。
「やってきたわよ。
なに、わからないところでもあった?」
「うん。教えてくれる?」
「どこ?」
「えっとね……」
ぺらりと問題集をめくる。
あれから──坂元くんが改札を通り抜けてから、きっかり5分。
彼の言葉の通り、一緒に学校に行く羽目にならないよう、時間をおいてから仁葉もその場を動き始めた。
別に仁葉は普通に追いかけてもいいと思っていたの。
坂元くんには悪いけど、そこまでこたえてないんだ。
でも、坂元くんが必死で距離を取ろうとしてるように見えて……。
変に近づいちゃいけない気がしたから。
どうしたらいいのかなぁ。
仁葉は坂元くんを傷つけたいわけでも、嫌な気持ちにさせたいわけでもないんだけど。
でも、仁葉がそばにいると、坂元くんは心を乱されるみたいなんだ。