その光を、追いかけて。








「ねぇ、梓ちゃん。
数Ⅱの課題してきた?」



自分の席に座っている梓ちゃんの横に立って、声をかける。



「やってきたわよ。
なに、わからないところでもあった?」

「うん。教えてくれる?」

「どこ?」

「えっとね……」



ぺらりと問題集をめくる。






あれから──坂元くんが改札を通り抜けてから、きっかり5分。

彼の言葉の通り、一緒に学校に行く羽目にならないよう、時間をおいてから仁葉もその場を動き始めた。






別に仁葉は普通に追いかけてもいいと思っていたの。

坂元くんには悪いけど、そこまでこたえてないんだ。



でも、坂元くんが必死で距離を取ろうとしてるように見えて……。

変に近づいちゃいけない気がしたから。



どうしたらいいのかなぁ。

仁葉は坂元くんを傷つけたいわけでも、嫌な気持ちにさせたいわけでもないんだけど。

でも、仁葉がそばにいると、坂元くんは心を乱されるみたいなんだ。






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