その光を、追いかけて。
カタン、と小さな音を立てて梓ちゃんが立ち上がる。
「ごめんなさい。
数Ⅱはあとでにしてもいい?」
「え、あ、うん。大丈夫だよ!
数Ⅱは6限目だしね」
「よかった。
じゃあちょっと行ってくるわね」
行ってくる……?
「どういうこと?」
「仁葉は気にしないで」
じゃあね、と仁葉に手を振ってくれた梓ちゃん。
その表情は確かに笑っていたけど、怒りを孕んでいて、なんだかとても怖かった。
行ってくるって多分、坂元くんのところ……だよね。
うん、きっとそう。
梓ちゃんのことだから、仁葉のことを思ってわざわざ怒りに行ったのかも……!
わわ、これ、やばいよね。
止めなきゃ!
慌てて仁葉は教室を飛び出す。
当然、そこには坂元くん姿も梓ちゃんの姿もない。
んーと、んーと、授業中でも先生にうっかり見つかることのない場所は……。
「屋上?」
よし、行ってみよう。
チャイムの音を背に、仁葉は廊下を駆け出した。