その光を、追いかけて。




「なぁ、鈴宮。
俺の話を、聞いてくれるか?」



そっと息を呑んで、それから小さくもちろん、と返事を返す。



君から初めて話そうとしてくれたこと。

仁葉はなんだって、聞くに決まってるよ。



「この話を聞いたらきっと俺が怖いとか、嫌だとか、そう思うから。
だからお前も、その時には離れていいよ」



そんなこと思うわけない。



でも、今の坂元くんに言っても無駄だよね。

きっと、伝わらない。



だから仁葉は、ただ唇を噛み締めた。






「それでもどうか、聞いて欲しいんだ。
柚季────俺が傷つけたあいつをはじめとする、大好きだった人たちとの出来事を」










そうして始まったのは、坂元くんと、坂元くんの彼女だった井出 柚季(いで ゆずき)さんという女の子。

そして、ふたりの周りにいたたくさんの人たちの話。






それはとても悲しくて、優しい、恋の記憶だった。






< 97 / 421 >

この作品をシェア

pagetop