その光を、追いかけて。
靴紐をきゅうっときつく結ぶ。
玄関に置いていたエナメルバッグの中には、学校に着いてから着替えるための制服もちゃんと入れた。
教科書は置き勉をしてるから、弁当や水筒くらいでそこまで重くない。
6時45分。
ジャージ姿の俺はキッチンにいる母さんに「行ってくる」と声をかけて、立ち上がった。
そのまま家を出て軽いストレッチ。
駆け出した俺が向かうのは、小さな公園。
春にはたんぽぽやチューリップの咲くそこも、9月に入りすっかり秋らしくなってきた今では金木犀特有の甘い濃い香りに包まれている。
酔いそうなそれを嫌う人もいるけど、俺はそんなに苦手じゃない。
角を曲がった先。
入り口のところ、赤い自転車のそばで待っていたのは、
「輝、おはようっ」
俺の彼女────柚季だ。