雨音はショパンの調べ
雨音
雨が降っている。

あの日と同じ雨……。


雨が降っている。

喫茶店の小さな窓。
静かに叩きながら。


冷めた珈琲を啜って、手持ち無沙汰にゆっくりと、煙草に火を点けた。

貴方はため息混じりにフッと煙草をふかし、穏やかに切り出した。


「俺たち……潮時だな」


貴方はそう言って俯くように、目を反らした。


雨の日に、別れ話をするなんて……。


「別れ話は陽のあたるテラスでね」


付き合い始めて間もなく私は、貴方に話したのに。


貴方は最後まで自分勝手で、私の願いを聞いてくれなかった。


ピアニッシモで奏でられるピアノの音が、雨音のように鳴っていた。


私は頬に落ちる涙の滴をそっと拭い、「そうね」と頷くしかなかった。


溜め息をつきながら、あの日を思い出す。

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