運命ひとひら
そして、試合は延長戦へともつれた。
「延長戦、始めっ!!」
審判の声がかかる。
「「ヤァーーー!!!」」
そして、私とその相手は、掛け声をかえる。
ーーーよし、打とう…!!
そう思った時だった。
竹刀が面に当たる鈍い音と、相手の低い掛け声が試合場に響いた。
「勝負あり!」
そして、主審の声がした。
負けてしまったのだ。
そんな時、私のぽっかりとなにかがあいた心の中に、思い出が思い出された。
******************
「ねぇー、竹内ー。明日しあいだよー。めっちゃ緊張するーーー。」
県大会の前日。
「…フッ…。せいぜい頑張りたまえ。練習でやったことを思い出せよ。
まぁ、俺のような素晴らしい先生と練習をしたことのあるような中学生はいないしね。」
そんなことをいう、ナルシストの竹内はいつもどおりだった。
「へーへー。そーですねー、竹内さんは素晴らしいですよねー。」
棒読みで言った。
「まあ、長田。そんな大口叩いてるってことは、優勝くらいできるんだよなー!!」
そう、笑顔でいわれた。
…悔しいけど、その笑顔にみとれてしまったのは、秘密だ。
ーーーーーー
試合後。
「竹内ー、優勝したよー!」
「おー、さすかだな、長田!」
そういって竹内は、私の頭を撫でた。
そういって、私は無邪気に微笑んだ。
雛菊のようだった。
ーーーーーーー
[雛菊]
花言葉は、無邪気。