イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「大体、最初から浮気なんて言葉を出す男になんて引っかかる女がいるわけないじゃないですか。
本気で口説きたいならもっと慎重にいかないと」
そう言って笑みを浮かべる風間の顔が、嘘だって見て分かった。
言葉通り、愛想笑いだ。営業スマイル。……多分、それもできてないけど。
目が全然笑ってなかったから。
「ああ、言われてみればそうですね。
いやー、俺も風間さんくらいの顔があればいいところに狙い定めて慎重にもなれるんでしょうけどねー。
俺の場合は手当たり次第いって、落とさないと付き合えないんですよ。
下手な鉄砲数打ちゃなんとやらです」
ははっと笑う三田さんに、風間の顔から瞬間的に笑みが消える。
それから、またなんとか取り繕うように笑みを作った。
「どんな鉄砲でもいいんですが、打つならうちの社員以外にしてもらえますか?
こんな事言うのも失礼なんですが、立花も村田も、正直迷惑してるみたいなんですよ。
YMタイヤさんとは長い付き合いですし、そちらとしても恋愛関係の事でうちとの取引がゴタゴタするなんて嫌でしょう?」
「あ……いやぁ、俺は軽く付き合いのつもりで誘ってるだけであって……」
「三田さんはそうだとしても、それを不快に思う女性もいるんですよ。
……村田、さっき三田さんに執拗に誘われたのが怖かったみたいで、今裏で泣いてるんです」
「え……っ」
「村田が騒ぐと、うちの店長も気づきますし……村田、ここだけの話、社長の親戚なんですよ。そうなると上の判断でYMタイヤさんのそれ相当の立場の方に連絡が行ってしまうケースも考えられるので……。
分かってもらえますか?」