イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


あくまでも穏便に事を済ませたいと言う風間に、三田さんは「いやぁ、まいったなー」とかなんとか言って誤魔化しつつ、最後にはしっかり頷いて。

「あのー、俺が受付嬢に執拗に誘いをかけていたのはぜひとも内密にお願いします」

そうヘラヘラ笑いながら、とっくにうちでの用事も済んでいたのか、そそくさと帰って行った。

そんな姿を、調子がいい人だなぁと眺めていると、隣から「嘘はこうつくんだよ」と風間に言われる。
恐らく、私の激しいアレルギー宣言を聞いていての嫌味のつもりだ。

「社長の親戚で今泣いてるっていう、か弱い村田さんは今どこに?」
「三田の野郎がしつこすぎるって、整備室で整備士捕まえて愚痴ってストレス発散してる。
おまえ、嘘ならもっと上手くつけよ。嘘ついた上、つけこまれてんなよ」
「良心が痛むあまり、嘘ってつきなれてなくて」
「何が良心だ。どの口がアレルギーだとか抜かしてたんだよ。それにあんなヤツに良心なんか感じる必要もないだろ」
「……YMタイヤさんに契約切られたらどうするの」

まったく、とため息を落としてから風間の視線に気づいて顔を上げた。
何か言いたそうな風間と目があって、首を傾げる。

いつも言いたい事なら言うくせになんだろうと。


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