イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
もともとの性格が平気で浮気できるタイプじゃない。
だからそれは仕方ない事だと思いながらも、もう随分と長い間祥太の事しか考えていなかった部分で風間の事を考えてしまう自分には違和感があったし……怖くもあった。
このまま流されてしまいそうで。
……ううん。流されるわけじゃないのか。
私としては、今のまま祥太と付き合い続ける方が、何の変化もなくて覚悟もいらなくて楽なんだから。
流されてるとしたら、むしろ祥太のいる方へだ。
今まで、まるで海の波のように抜け出そうとしては連れ戻されを繰り返してきた。
連れ戻されてきた原因は、祥太への情だったり、私の覚悟が足りなかったり色々だ。
とにかく、そんな風にただ揺られるままここまできたのに、今、そこから浜辺へ上がろうとしている自分がどこかにいるから……それが怖いのかもしれない。
七年以上も浸かってきた水から上がるのが。
閉店時間を迎えた店内に、合図の音楽が鳴り始める。
それを聞いてから、シャッターを閉めるために外に出た。
19時の空はもう暗く、ぽつぽつと小さく見える星をなんとなく眺めていた時。
「実莉」と声を掛けられた。
誰かと思えば、駐車場に祥太の姿があって……。
お店に来た事なんて一度もなかったのにと驚く私に、スーツ姿の祥太がニコニコと笑顔で近づく。