イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「びっくりさせようと思って」
「びっくりしたけど……仕事は? もう終わったの?」
「ああ。実莉ももう終わりだろ? 一緒に夕飯食べようかと思って」

とりあえずシャッターを閉めてから、祥太をつれて道路や歩道からは見えない位置に移動する。
お客様に見られたらマズいから。

来店されたお客様用の駐車場を抜けて、もうひとつ奥まで行く。
整備が終わった車の並ぶ駐車場には、預かった車が雨に濡れないように屋根と塀がある。

大きな倉庫のような駐車場には、普段はほとんど入らないけど、塀が目隠しになると思いそこに連れ込んでから、祥太を見た。

「ごめんね。今日はまだ仕事なんだ。営業店会議の日なの」

今月の売り上げやらを発表したり、こんな要望があっただとか、お店として少しでもお客様の希望に応えられるようにと色々話し合う日だ。
会議自体、一時間はかかるし、抜けるなんて事はよほどの用事じゃなきゃできない。

そう謝る私に祥太は「えー、せっかく来たのに」と少しごねた顔をしたけれど、こればかりは私もどうにもできない。
仕事なんだから。

「ごめんね」

それでも、こんな風に可愛い顔で駄々をこねられたら、自然と謝罪の言葉が出てきてしまうもので。
申し訳なくなって謝る私に、祥太は少し口を尖らせながらも「まぁ、仕事じゃ仕方ないかー」とぶつぶつ言う。



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