イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


どうやら諦めてくれた祥太にホっとしながら、「また今度ね」と笑顔を向けた瞬間。
抱き寄せられた祥太に、そのままキスされた。

触れるだけのキスをした祥太に驚くと、にっといたずらっ子みたいな笑顔を返されて。
「これで我慢する」と抱き締められる。

あまり身長の変わらない祥太に抱き締められると、祥太の肩から唇から上ぐらいが覗く形になる。
視界に入る祥太の茶色い髪が、緩やかな風に揺れていた。

こんな風に抱き締められたのは久しぶりだった。
私も祥太も、あまりスキンシップとかを求めない付き合い方をしていたから。
正直に白状すれば、祥太の初めての浮気を知った直後から、なんとなく嫌になっちゃったっていうのもあるけれど。

ぎゅっと抱き締められながら一ヶ月前の浮気が頭を過ったものの、だからと言って祥太にこうされる事をそこまで嫌だとか思わない自分に気づき、あの事が私の中で無事過去になったんだなと知る。

初めての時は過去にするまでにかなりの時間がかかったハズなのに。
慣れって怖い。

「祥太、もう私、戻らないとだから」

少しの間そのままでいたけど、まだ仕事中だ。
こんな事している場合じゃないしと、祥太の胸をそっと押すと、祥太は少し名残惜しそうに腕を緩めて。

「じゃあもう一回だけキスしたら大人しく帰る」と、私の腰に腕を回した状態で言った。
ぐっと力を入れられて距離が縮まる。

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