イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
少し間を開けてから「問題だらけだ」と言った風間が、「実莉、会議あと少しで始まるから」と私に話しかける。
それにビクっと肩を揺らしてから、「じゃあね」と祥太の腕から抜け出したけれど。
すぐに手首を掴まれて……何かと思い振り向いた途端にキスされて。
「ごちそうさま」と笑った祥太が、手を振って帰っていく。
そんな様子を呆気にとられながら見てから、まだ近くにいる風間を思い出した。
祥太といるところを見られたからなのか、キスを見られたからなのか、なんとなく気まずくて……でも、このままただ立っているわけにもいかないからそろっと見ると、すぐに目が合う。
道路側に立つ、大きな看板からの光をわずかに受けた風間の、少しおっかないような瞳と。
黒いつなぎを着て暗闇に紛れている風間の瞳だけが小さく光って見えて、今の風間の目つきの悪さも手伝って本当に少し怖い。
「も、戻らないとね。ごめんね、呼びにこさせちゃって」
平静を装いながら横を通り過ぎようとした私の腕を風間が掴むから、肩が跳ねる。
ぐっと私が振りほどけないほどの力を込める風間を戸惑いながら見上げて……瞳の中に浮かぶ熱に魅入られてしまった。
ドン、と高さのある塀に背中があたり、両手もそれぞれ塀に押し付けられる。
それからすぐに唇が重なって……数秒間触れた後、わずかに離れた。
鼻先がぶつかりそうな距離から送られる熱い眼差しに、胸が苦しい。