イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「比べろよ。祥太と俺を」
そう言った風間がまたゆっくりと近づく。
そして唇が触れ合う直前、「俺と祥太の違いを、身を持って知れ」と告げた。
今度は触れ合うだけに留まらなかったキスに、少し強引に唇を割られ体温が溶けあうと、元々苦しかった胸が窮屈さを増す。
情熱的に私を求める舌に、背筋をぞくりとした何かが駆け上がり、思考回路をぼやけさせる。
「……はっ、ぁ……っ」
どちらのものか分からない熱い吐息さえも咥内に消えていく。
風間の香りや、体温、雰囲気……たまに絡まる熱い視線。すべてに魅了され酔わされ、抵抗さえできなくなってしまう。
祥太の事さえ……考えられなくなってしまう。
比べるなんて、無理だ。
祥太と風間の事を比べるなんて……無理。
荒々しくも情熱的に感じるキスを終えた風間が、ゆっくりと唇を離す。
未だ冷めない熱を持つ瞳にドキンと跳ねた胸を隠すように、目を逸らした。
「こんなの見つかったらクビだって言ったくせに」
本当の気持ちを見抜かれたくなくてそんな事を言った私に、風間はふっと笑って。
「そしたら責任取るまでだ」とわざとなのか祥太と同じ事を言う。
さっき、祥太が同じ事を言った時には、現実味のない言葉にただただ驚いただけだったのに。
風間の言葉に胸が騒ぐのは、ふたりの元からの性格の違いを知っているからだろうか。
浮気性の祥太と、真面目な風間。
言葉の重さの違いは、比べるまでもなかった。