イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「後で何かお礼する」
そう言った私をじっと見た後、風間は「ボディーガード代?」と聞いてきた。
「そんなところ」
「別におまえに頼まれてついてきたわけじゃないんだから、おまえが気にする事じゃねーだろ」
「だとしても、結果的には助けてもらってるんだし、私はそれを気にしないでいられるほど無神経じゃないの」
「それは知ってるけど」
歩いていた足を止めると、隣を歩いていた風間も立ち止まる。
目の前にあるのは、大きな公園の入口。
そしてその中央付近にある噴水の前に、ひとりの女の子の姿があった。
胸のあたりまである黒いストレートの髪は大学の頃から変わっていなくて、すぐに室井さんだって分かる。
室井さんは、白いブラウスにベージュの膝丈のスカートをはいていた。
その立ち姿に、おしとやかだとかそんな言葉が頭に浮かぶ。
村田さんいわく“修羅場”を前にしてこんな事を呑気に考えている場合じゃないのは分かっていても、膝丈のスカートなんて制服でしか着ない私には新鮮で思わず見とれてしまう。
清楚ってきっとこういう事だなと。
私も楽だからって理由でショートパンツだとかばっかりはいていないで、そろそろそういうお姉さんっぽい服装をするべきかもしれない。
そう思ってから、でもそんな服を着たところで、隣に風間がいればギャアギャア騒ぐんだろうし何着ても一緒かと呆れ笑いをひとつこぼした。