イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


この場所を提案したのは、私だ。
風間が物騒な事を言うから、人目があってなおかつ、隠れ場所の少ない場所をって私なりに考えて選んだ場所だった。

大きな公園で木が周りに茂ってはいるけど、休日の日中となれば親子連れやら散歩の人やらで賑わっているし、お店だとか路地を通らないと行けない場所よりも安全かと思ってここを選んだ。
ただ、今日は曇り空だし、いつ雨が落ちてきてもおかしくない天気だから、それほどの賑わいじゃないのは誤算だ。

室井さんもこっちに気づいたようで、視線が私を捕える。
それを合図に隣の風間を見上げると、「適当に帰るから気にするな」と言われた。

30メートルほど先にいる室井さんの近くまで歩く。
2メートルくらい残して立ち止まった私を、室井さんはじっと睨むように見つめて……その表情に、いい話ではないなって悟る。
最も、室井さんが私に言いたい事がいい話のわけがないけれど。

「呼び出したりしてごめんなさい」とまず挨拶をしてくれた室井さんに首を振ってから「祥太の話って事でいい?」と聞く。
単刀直入に聞いた私に、室井さんも話を長引かせるつもりはないようで、すぐに頷いた。

「奥村くんの事、どう思ってるの?」
「どう思ってるって……どういう意味?」

てっきり、別れてください的な内容なのかと予想していただけに不思議になって聞くと、室井さんは睨むような視線を向けたまま答える。

「先週会った時、奥村くんが言ってたの。立花さんの様子がちょっとおかしいって」

驚いたのは、祥太が私の変化に気づいていたのもあるけど、それだけじゃなかった。

「先週会ったって、偶然? それとも……大学出てからもずっと、連絡取り合ってたの?」

祥太が、室井さんとまだ繋がりがあるんだって事実に驚いたから。
聞き返した私に、室井さんは静かに頷く。


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