イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「やましい関係じゃなくて、たまに私からメールして都合が合うと会って話してくれるって程度だけど。
先週会ったのだって、一年ぶりとかだし」
「その時に、私がおかしいって言ってたの?」
「そう。立花さんの気持ちが、少し離れていっちゃってる気がするって……会っている間、落ち込んだままでずっと上の空だった」
室井さんの言葉に、先週、祥太が急に職場に来た理由に気づいた。
祥太なりに不安を感じたから、わざわざ私のところまで来てくれたのかって。
そういえば今週末も会えないかって結構しつこかったな。
祥太に言われるよりも先に室井さんのメールが来ていたから断っちゃったけど。
「それで、話って何? 私が祥太をどう思ってるか聞いて、どうしたいの?」
話の主旨が分からなくて聞くと、室井さんは少し黙ってから顔をしかめて口を開く。
「私はずっと、奥村くんが好きだったし、それは今でも変わらない。
だけど奥村くんは立花さんが好きだって言うし、見ていても立花さんだけが特別なんだって分かったから、ずっと重荷にならないようにって我慢しながら想ってきたのに……。
なんで、奥村くんを不安にさせるの? なんで大事にしないの?」
なんで、不安にさせるのか。なんで大事にしないのか。
それは私がずっと、祥太に思ってきた事だった。
それを私が祥太にぶつけてもいないのに、まさかこんな形で室井さんにぶつけられてしまうなんて思ってもみなかった。
投げようと思いながらもずっと投げられなかった、ひとりで抱えているには重たいボールを、急に現れた室井さんに奪われて、ぶつけられてしまって……。
無防備だった心にひびが入った気がした。
人が少ないって言っても家族連れの目立つ公園には、午後一時っていう時間もあってか賑やかな声が聞こえていた。
吸った空気が、喉の奥でひゅって、おかしな音を立てた。