イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「してきたよ。ずっと、祥太を大事に……。自分よりも、祥太をって……そう思って大事にしてきた。
でももう、分からないよ……。
なんで……私は何度浮気を繰り返されても、ずっと祥太を大事にしなくちゃいけないの……?」

何度も思った事だったけれど、言葉にするのは初めてだった。
「室井さんと祥太の事も、知ってる」と告げると、室井さんは驚いた顔をしてからバツが悪そうに目を伏せた。

私が気づいていないと思って、こんな事を言ってきたのだろうか。
気付いていないからいいやと思って、祥太を大事にしてなんて言ってきたのかと思うと、一気に苛立ちが襲ってきた。

悪いのは室井さんの恋心じゃなく、それに応じた祥太だ。
そして、祥太の浮気をきちんと咎めないで見逃している私も同罪だ。

それを分かっていたけれど……だからって、無関係ではない室井さんにまるで正論とばかりに祥太を大事にしろなんて言葉を言われるのは嫌だった。

「なんで……平気で私にそんな事言いに来たのか分からないけど」と話を切り出すと、室井さんがこっちを見る。
その顔は相変わらずしかめられていたけど、理由は最初とは違って見えた。

「室井さんが私の立場だったら、浮気がバレる度に謝り倒して、それでもほとぼりが冷めるとまた浮気を繰り返す祥太を許せるの?
断れない性格だから、優しさからなんだから仕方ないって、それだけの理由で許し続けられる?
大事にできるの? 自分が大事にもされてないのに?」

答えが返ってこないまま、続けた。
こんなのまるで八つ当たりだし、こんな責めるような口調で言う自分を止めたいのに……止められなかった。

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