イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「帰り、車で送ってやるから服そのままでいいだろ」
「あ、うん」

シャワーを借りた後、脱衣所に備え付けられているステンレス製の物干し竿に、それまで着ていた雨に濡れた服をかけさせてもらったけど。
さすがに帰るまでに自然乾燥で乾かすのは難しい。

風間に借りた服は、白のロンTに黒のカーディガンと、下はグレイのスウェット。
全部がダボダボしてるし、これで外を歩くのは無理だから、風間の言葉に甘えて送っていってもらう事にする。

祥太に迎えに来てもらうっていう選択肢もあるかもしれないけど、今は会いたくなかった。
室井さんと陰で未だに繋がっていた事が少なからずショックだったからっていうのもあるし、見えてしまった自分の気持ちの整理もまだつかないから。

それにしても。
この緊張はどうにかならないものかと、風間が入れてくれたココアを飲みながら顔をしかめる。
何十回って遊びにきて、もう祥太の部屋よりも慣れてるとも言えるこの部屋が、まるで初めてきた彼氏の部屋並みに緊張を誘ってくる。

理由が、一度関係を持ってしまったからだっていうのは分かるにしても、それにしたってなんで今更こんなにドキドキしてしまうんだろう。
祥太とふたりきりになったって、こんな風に緊張しないのに。

まるで、何かを期待するようにドキドキと気持ちを急かす胸が苦しすぎて居たたまれない。


< 127 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop