イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「なんで別れなくてもいいなんて言ったの……っ? なんで……」
「なんでそんなに、私なんかが、好きなの……」そう呟くように言った私に、風間は少し黙ってから「ごめん」と同じように小さな声で言った。
窓を、強くなった雨が叩いていた。
抱き締められたまま、どれだけの時間が経ったのか分からなかった。
涙の止まらない私を、風間はただ力強く抱き締めてくれていて……風間の胸の音や体温、香りに安心して恐る恐る背中に手を回す。
自分から手を伸ばす事がどういう事かは分かっていたのに、自分の気持ちを止められなかった。
もう……抑えきれなかった。
「服が冷てー」
私の涙が落ち着いた頃、風間は不意にそんな事を言って笑った。
風間の言葉に、しっとりと憂いを含んでいた雰囲気が少し軽くなる。
「ああ……本当、冷たそう」
「よくそんな他人事みたいに言えるな。おまえの涙だろーが」
「仕方ないでしょ。色々と気持ちが不安定だったんだから」
そう減らず口を叩いてから、「でも、ごめん」と謝ると風間が笑う。
「素直じゃねーな」
「そんなの昔から知ってるでしょ」
「まぁな」