イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


すぐには意味が分からなかった。泣いて頭がぼんやりしているせいもあったのだと思う。
動揺し始めたのは風間の言葉を聞いてから、たっぷりと十秒以上が経った頃だった。

私が言葉の意味を理解したタイミングを見計らっていたのか。
「え?」と、顔をしかめたところで風間がもう一度繰り返した。

「俺の事好きじゃなくていい。祥太と別れなくてもいい。
実莉にとっては悪い話じゃないだろ。
俺が浮気相手に成り下がるなんて、言い寄ってきてる女が知ったら発狂しそうだけどな」

一瞬にして顔を青ざめさせた私を風間は笑って。

「言うわけねーだろ、そんな事。
浮気相手になったなんて、俺にとっても得する話じゃねーし」

私を押し倒しながら、そう苦笑した。

涙の止まらない目尻に何度も優しく口づけられて戸惑ったけど……それも最初だけだった。
まるで慰めるように触れてくる唇とぬくもりとそれから、優しくも熱いまなざしに……。

誘われるように頷いて、条件を出した。

「じゃあ、ひどくして。
私が一生、この罪を忘れられないように」

そう言った私を風間はツラそうな瞳で見つめて……そして、唇を合わせた。

それが、昨日の出来事だ。


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