イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
室井さんの言うように、ただ会って話していただけかもしれない。
ただ会って話すだけなら、友達とだってするし祥太もそういう意識だったのかもしれない。
でも、祥太の様子を見る限り、室井さんがまだ自分を好きだって分かってるし、室井さんとふたりきりで会う事が、私に対して後ろめたい事だとも気づいてる。
私が嫌がる事だって。
それが祥太の表情から分かって、胸の中を冷たい風が抜けた。
と同時に元々決めていた覚悟が重みを増す。
祥太は、真っ直ぐに見つめる私に申し訳なさそうに表情を崩してから目を伏せた。
「ごめん……。俺、大学の頃から携帯変わってないし、室井も俺の番号とか知ってたからたまに連絡がきて……。
会いたいって電話で泣かれるとどうにもできなくて、それで……。
でも、俺からは一度もメールしたりだとか電話したりした事はなくて……」
「どっちからとか、そういうのはもういいの。室井さんとの事を問い詰めるつもりもないし」
「でも俺、本当にただ会って話しただけで、実莉が考えてるような事は何も……」
「例え何もなかったとしても……私は、祥太が祥太に好意を持ってる子と会うだけでも嫌だよ」
遮るように言うと、祥太は驚いたような顔をした後、眉をしかめた。
本当にツラそうなこの顔を、何度も見た事がある。
大学の頃、祥太関係で私が女子から嫌がらせを受けたって聞いた時も、高熱を出して寝込んだ私をお見舞いにきてくれた時も。
そして……浮気の弁解の時にも必ずする顔だ。