イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


「祥太がね、私以外の子に優しくするとか……本当は嫌なの。誰にでも優しいのは祥太の長所だし、そんな事思うのおかしいって何度も思ったけど……やっぱり何度考えたって、嫌だった。
祥太に想われてるのは分かってる。
けどね、他の子に優しくしている時、祥太は私の事忘れてて……私が嫌だって言ってもそれを繰り返して……。
そういうの、もうツラい……」

声を出すのは、こんなに大変な事だったっけ。
そう思うほどにひとつひとつの言葉が重たく感じた。

先週、室井さんとの事があって……風間との事があって。
時間をかけてかなりの覚悟を決めてきたハズなのに、それでも、祥太を前にするとなかなか声が出ようとしなかった。

もう、微笑む事はできなかった。
顔を歪めた私を見た祥太が、同じように表情を崩して目を細める。

「ごめん、実莉……。俺、本当にごめ……」
「謝らないで……っ」

強い口調で遮った私を、祥太の悲しく歪んだ瞳が見つめていた。

「謝らないで……。もう、祥太に謝ってもらう資格は、私にはないの。
私も……祥太と同じ事をしたから」

一度目を伏せてから、ゆっくりと視線を合わせる。
そして、まさか……とでも言いたそうな顔をしている祥太に告げた。

「私、浮気したの」

祥太の瞳が、困惑からか大きく揺れていた。


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