イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「他に好きな男がいるのか? そいつが……浮気相手?」
「これは私と祥太の問題だから……浮気相手だとか好きな人だとかは関係ないでしょ」
「そうだけど……」と祥太が呟く。
伏せていた視線を上げると、納得いかない表情の祥太と目が合って胸の奥の部分に鈍い痛みを感じた。
じわじわと範囲を広げていく痛みが胸全部を覆い、身体中に広がっていく。
痛みからも……祥太からも。逃げ出したい衝動に襲われる。
「俺は……泣かれたりすると目の前の事をどうにかしようってそればっかりになって、今まで浮気も何度もしたけど……。
それでも一番大事なのは実莉だけだから……別れたくない」
「もう一度だけ、チャンスが欲しい」と真っ直ぐな目をして言う祥太に、少し黙ってからまた首を振った。
「俺、実莉のためなら何でもするから……っ。
実莉が傷つかないように変わるから……だから、頼むから、実莉……っ」
悲しみから細められた祥太の瞳に、涙が浮かんで頬を伝って落ちる。
いつもなら、男のくせに女の事くらいで……なんて笑っていたかもしれないけれど。
今はそんな気持ちにはなれずに、ただただ胸が痛かった。
祥太の頬を涙が流れる度に、何かで切り付けられているような痛みが私全部を襲っていた。
「祥太が……」と、たった数文字声にしただけで止まりそうになる言葉を、必死に繋ぐ。