イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「もう、無理なの……。もう……祥太の傍にはいられないし……きっと、傍に、いたくないんだと思う。
祥太の隣にいる限り、私は感情を殺し続けなくちゃならないから」
発した言葉が、喉を切りつけながら出て行くみたいだった。
切り付けられた場所からじわりじわりと身体中に痛みが広がっていく。
その痛みに耐えながら、祥太と目を真っ直ぐに合わせた。
「ごめんね。私のわがままだって思っていいから……。
私のために、別れて」
ポロポロとこれでもかってほどに溢れる涙が次々に地面に落ちていく。
それでも目を逸らさずじっと見つめる私を、祥太も見つめ返していたけれど……しばらくそうしてから、ふっと表情を崩した。
ツラそうな微笑みが……この恋の、ううん。祥太との関係の終わりを教えていた。
「実莉こそ、ズルい言い方するなよ。そんな風に言われたら……断れないだろ」
祥太は笑みを吐き出すようにして言って。
「好きな子のわがままくらい……聞くよ。一度も無理言わなかった実莉が俺に頼むわがままだもんな……。
ちゃんと聞かないと……」
まるで自分に言い聞かせているようなトーンでそう続けた。
手をぎゅっと握った祥太が、涙を浮かべたままなんとか微笑む。
眉は苦しそうに寄ったままだった。
「何度も何度も傷つけてごめん……。優しくできなくてごめん。
実莉が俺に望む最初で最後のわがままがこんなお願いなのは、正直嫌だけど……嘘だって思いたいけど……」
「実莉がそうしたいなら、終わりにしよう」
涙を落とした祥太の無理した笑顔に、さっきまでじくじくと痛んでいた胸がぽっかりと抜け落ちた気がした。
祥太はいつだって優しかったよって、そう言いたかったけど……もう何ひとつ声にならなかった。