イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
ぐいぐい来る村田さんに苦笑いしながら「違うよ」と否定したのに。
私の言葉なんて気にも留めていない様子で「いいんですっ」と、両手を握られた。
何がいいんだかよく分からなくて戸惑う。
「だから男なんて最初からやめておけばよかったんです。女の子同士なら傷つく事なんてないんですよ?」
「そう、かな……? 結局、人同士の付き合いだし、同じじゃない?」
やんわりと握られた手をはがしながら言うと、逆にぎゅっと握られて肩が跳ねた。
「全然違いますよっ! そんな事思っちゃってる時点で実莉先輩は男の毒牙にかかっちゃってる証拠なんです。
だから一刻も早くそこから抜け出す必要が――」
力説する村田さんに、ははって乾いた笑みを浮かべながら反論を諦めた時。
頭を何かでポコンと叩かれた。
いつかも同じ事をされたのを思い出して……多分、今それをしたのも同一人物だろうって分かって、咄嗟に振り向けない。
そんな私なんか気にもせず、村田さんが私の後ろに立つ風間にキっと睨むような視線を向けた。
「風間さん! 幻滅しましたっ」
「幻滅? 別にどうでもいいけど、これ、注文してたパンフ。新しいの届いたから並べといて」
頭の上から聞こえる声にギュっと胸が縮こまって……一気に息苦しくなった。