イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「実莉先輩に何したんですか? 私、風間さんはもしかしたらその辺のろくでなし男とは違うんじゃないかって思ってたのに……。
実莉先輩がこんな風に避けまくるくらいの事しでかすなんて!」
怒り心頭、といった感じで怒る村田さんに、勘違いだし風間は何も悪くないって言いかけたけど。
それを、頭の上から降ってきた声が止めた。
「俺は何にもしてねーけど。でも……こんだけ避けるって事は、俺が悪いのかもな」
違う、って言いたかったのに。
縮こまったままの胸が、音になろうとした声を止める。
振り向きたいのに、それさえできなくて……そんな私の頭を風間がポンと撫でて。
「パンフ、よろしく」そう言って、整備室に戻って行った。
「……なんですか、あの態度。あんな傷ついた顔されちゃったら責めるにも責められな……え、実莉先輩……?」
驚いたような声と眼差しにハッとして、慌てて目元を押さえた。
風間に伝えたかった気持ちの代わりに溢れた涙が頬を伝っていて、それを指先で拭う。
「ごめん……なんでもない」
笑顔を作ろうとしたのにそれは自分でも気づくくらいに歪にしかできなくて。
気づいたハズなのに、村田さんは何も言わずにボックスティッシュをすっと差し出しただけで何も言わなかった。