イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「私、シャッター閉めてくるから」
そう言って席を立つと、私がきちんと答えなかったからか、村田さんは少し膨れた顔をしていたけど。
苦笑いでそれを交わして、そのまま外に出た。
村田さんの言っていた事は分からなくはない。
そこまで好きなら周りなんて気にせず突っ走ってもいいのかもしれないと思うし、私がもし第三者として相談に乗っていたら、自分の気持ちに素直になった方がいいとか言うのかもしれない。
本当に好きなら伝えるべきだって。彼だってきっとそれを望んでるって。……そんな事を言うのかもしれない。
だけど当事者になると……そんな簡単な問題じゃないんだって、気付く。
圧し掛かってくる祥太への罪悪感。最後に見た、泣き顔。別れたくないって告げる、震えた声。
ずっと好きだった人を泣かせたのは紛れもない私で……。
そういうの全部無理やり断ち切ったのは私だ。
恋愛じゃなかった。もう、恋人としての好きはとうに終わっていた。
それでも……別れてしまった事への罪悪感は大きく、そのあまりの重さに身動きひとつできなかった。
これでよかったって思うのに。もっと早くにこうするべきだったとすら思うのに。
祥太を傷つけてしまったショックで前が向けない。
風間にどんな顔をすればいいのかも、何を伝えればいいのかも分からない。
『傷ついた顔してましたよ』
この一週間、風間を避けちゃったから、きっと私のせいだって思うのに。
風間にかける言葉が、祥太とのたくさんの思い出に埋まってしまって見つからない。