イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―



土曜日の午前中、起きてぼんやりしているとスマホが鳴った。
メール受信を知らせる音に、スマホに手を伸ばして驚く。

送信者が祥太だったから。
当然だけど、別れてから一週間、祥太からの連絡はなかったし、私もしていない。
もともと友達から始まった関係だけど、別れたからって友達に戻ろうだとかの話はしてないし、もしかしたらいずれはそうなるかもしれないけど、今は考えられない。
それは多分、祥太だって同じだと思うのに……。

突然のメールに戸惑いながらもゆっくりと開いて、内容を見て……ああ、そうかって思った。

今日は私の誕生日だ。
祥太からのメールの内容は、誕生日おめでとうって事と、プレゼント送ったからそろそろ届くって事だった。
あと、大事にしろよって。

直接会っては渡せないから、わざわざ送ってくれたのかもしれない。
プレゼントも、もしかしたら別れる前に買ってくれてたから、そのまま持っている事もできなくてってところだろうか。

傷つけたハズなのに、文面からは怒りだとかそういうものは感じられなくて少しホっとする。
勝手だけど、いつも通りのメールが嬉しくて、何重にもなってかかっていた枷がひとつ外れた気がした。

返信するかどうか迷って、真っ暗になった液晶画面を眺めてしばらくすると、ピンポーンとインターホンの音が響いてびっくりする。
すぐに祥太からのプレゼントだって気づいたから、ドアホンは確認せずに、印鑑を持って鍵を開けた。
それからドアを開けて……。

ドアの前に立っていた人物に驚く。
驚きすぎて声も出なかった。

印鑑片手にただポカンとする私を見た風間が、「間抜けな顔してんな」と呆れたように笑うから、やっと我に返った。


< 163 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop