イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―
「なんで……」
声にしたものの、その先が続かない。
なんで、ここにいるの?
なにしにきたの?
なんで……そんなにケガしてるの?
さっきの呆れ笑いを消して、優しい微笑みを浮かべる風間の顔には、パッと見だけでいくつもの傷がついているのが分かった。
口の端は切れて血が出てるし、右頬だって裂傷ができてる。服だって、ヨレヨレだし……。
もう一度「なんで……」と口にしてから、それよりも手当てしなくちゃとハッとして風間に入るように言った。
そして、テーブルの前に座らせてから消毒液と絆創膏を持って、隣に向かい合うようにして座る。
傷はどれもそこまで深くないって分かってホッと胸を撫で下ろしながら、とりあえず綺麗に拭こうとウェットティッシュを取り出したところで風間が笑った。
「殴り合ってきた」
笑いながら言うような事じゃない台詞が飛び込んできて、耳を疑う。
いたずらっ子みたいな顔して笑った風間が、驚いて何も言えない私に続ける。
「一応友達だし、黙ってんのも嫌だったから。
で、実莉に手出したのは俺だから一発殴れって言ったのに、〝俺も悪かったし〟とか言って殴らないから、なんか……うっかり俺の手が出て」
それを聞いて、相手が祥太だと気づいて……驚いたけど、同じくらい納得もした。
俯いて下唇をかみながら「なんで風間が先に手出すの……」と呟くように聞くと、風間が答える。